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13年もの間、積み重なった赤字を 3年で脱して黒字に導いた、その手腕に迫る!株式会社紀文 代表取締役社長 向井公規さんインタビュー

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13年もの間、積み重なった赤字を 3年で脱して黒字に導いた、その手腕に迫る!

13年もの間、積み重なった赤字を
3年で脱して黒字に導いた、その手腕に迫る!

株式会社紀文 代表取締役社長

向井公規さんインタビュー

「ヒット商品なんて、そうそう簡単に作れるもんじゃない……」
なんて、あきらめてたりしませんか?

難しいと思いがちですが、順調に、そして結構軽やかに、
大人気商品を送り出している経営者がいます。

飛騨高山でレストラン事業を営む
株式会社紀文の向井公規社長が
商品開発の際に行なったのは、
丁寧なマーケティングリサーチと
徹底したお客様目線。

ことさら特別なことではないはずなのに、
売上を大きく変える結果になるのはなぜか?

価格は結構高め設定。
それなのにヒットし続ける理由。

鈴木:飛騨高山の観光地で、
お父様から受け継がれたレストランを経営されている向井さんですが、
その飲食の事業で、ものすごいヒット商品を生み出したそうですね。

向井:7年前に売り出した「高山バーガー」という商品なんですが、
これが好評を得まして、いまもうちの看板商品になっています。
上質な飛騨牛100%を使い、1つ800円という価格ですが、
多いときは1日700個売り上げています。

鈴木:それはすごいですね!
どういった経緯で、その商品を売り出すことになったのでしょうか?

向井:私の父はおいしいものをちょこちょこ食べるのが好きな高級志向で、
そのような志向のレストランをやりたいって言って始めたんだけれども、
お客様には正直あんまり求められてないっていうのが現状でした。

そこで、まずは自分で観光客の話を聞いたり、
1ヶ月間集中して現場に入ったりして、
実際の声を集めてみることから始めました。
そうしたら「観光地の中なので、食べ歩きをしたい」
「ちょっとずつ、いろんな味を楽しみたい」という意見が主流だったんです。

東海北陸道が開通して、金沢や名古屋からも便利になったこともあり、
現在、高山に訪れる観光客は年間450万人を上回っています。
しかし、高山はちょっと途中に立ち寄る観光地って感じに変化して、
目的地というより通過点。
そんなわけで、とにかく急ぎのお客さんが多いんです。
加えて、海外からの観光客も、あまり食べ物にはお金を落としていかない傾向でね。
手軽で、食べ歩きできる商品を、と考えました。

鈴木:なるほど。求められているのは、高級なコース料理ではない。

向井:高山バーガーは、りんごのソースを使っているのが特徴なんです。
飛騨って結構りんごが採れるので、
特産物を使いたいというのもあって考えた商品で、
少し酸味の効いたさっぱりしたバーガーになってます。

鈴木:りんごのソース!
そういえば、りんごってお肉の消化を助ける酵素がありますよね!

向井:そうそう。そうなんです。

鈴木:さすが、ご存知で組み合わせたんですね?

向井:いや、それは後から人に言われて知ったんです(笑)。
最初は飛騨の特産のりんごを使いたいという思いで、
ハーブも入れたりして、健康にもいいようなイメージで…。
自分的には、本当にすごくおいしいと思ってます(笑)。
さっぱりしてるからか、結構みなさんペロッと食べていかれて、
外国人の方などは平気で2〜3個食べちゃう。
りんごソースだから、もたれないというのもありますね。
このハンバーガーの登場で、売上は年商ベースで約4倍になりました。

鈴木:大ヒットですね!
まず味の良さというのがもちろんあって、
さらに、特産である飛騨牛とりんごで、土地の特色を出しつつ、
気軽に歩きながらでも食べられる商品……、
ということですね。

第2弾の狙いはインスタ映え!
流行のど真ん中を捉えた企画とは?

鈴木:高山バーガーの成功の経験を生かして、第2弾もスタートされたとか。

向井:はい、新企画としてフルーツサンドとスムージーの専門店、
「シェフは果樹園」を11月19日にスタートさせました。

鈴木:りんごのお話もありましたけれど、飛騨のイメージからすると、
フルーツというのは意外な気もします。

向井:飛騨牛ばかりが知られていますからね。
でも、飛騨はフルーツも豊富なんです。
昼と夜の気温差が激しいこともあって、かなりおいしい果物が採れます。
地元では有名なんだけど、なかなか全国には知られていないから、
紹介したい気持ちもありまして。

まずは、フルーツで食べ歩きができるものですね。
テイクアウトというよりも、ニーズは食べ歩き。
なので、ちょっと面白いロールケーキとかも考えてます。

鈴木:確かに、フルーツサンド、人気もあるし魅力的ですね。

向井:高山の町なかでは、そもそもパンを扱ってるところがあまりないんです。
それに、外国人観光客は、旅行の初日とか最終日には高山に来ない。
空港がないのでね。
だから、行程の半ば、中間地点という感じで高山に寄る。
それってちょうど、一回和食に飽きてるタイミングなんですよ。
うちの店でも、やっぱり和食よりも洋食系のものが逆に出る。
そういう観光客の動きを見たところで、あえてパンにしました。
現行の飛騨牛の商品「高山バーガー」を一品残しつつ、
フルーツに特化した商品を出していこうと。
それに合わせて、店のファサードも一気に変えました。

あと、今って「インスタ映え」というのがあるじゃないですか。
フルーツサンドとスムージーは、女性を意識した商品ですから、
そこはちゃんと作っていかないと。
見た目にも、きれいでインパクトがあるものにしています。

鈴木:11月19日のオープンを迎えられたばかりですが、その手応えはいかがでしたか?

向井:おかげさまで、予想以上の反応があり、
オープン初日は、午後2時には当日分のフルーツサンドやスムージーが完売しました。
一押し商品のイチゴ10個を使用したスムージー「ドッサリーナ」をはじめ、
各種スムージーは目標の倍以上、フルーツサンドは目標50食のところ150食販売でき、
スムージーとサンドウィッチのみで、30万を超える売上となりました。
閑散期に入ったにも関わらず、思った以上にご好評いただいてホッとしてます。

鈴木:素晴しい〜! おめでとうございます!
その成功の秘訣をうかがいたいと思いますが、
向井さんは、新しいお店のオープンに際し、
とても丁寧にマーケティングリサーチをされてますよね。

顧客ニーズに応えるだけじゃない。
新商品を必ず成功させる法則。

向井:変な言い方ですけど、自分で考えないようにしてるんです。
「こうしたい、ああしたい」という自分の思いだけが強いと、
当たればいいですけど、外れると痛いんで(笑)。
自分を無にしてひたすら声を聞くというか。
自分の店を見るときにも、できる限り客観的になって、
自分自身をお客様と同じ目線にして、
「見る・聞く・味わう」ということが
重要だと感じています。

もちろん、導線などのデータはしっかり取ります。
たとえば、高山バーガーを作った当時のコンセプトは「締めの飛騨牛」。

リサーチをかけたら、「バスや電車の時間があるから、
何か急いで持って帰れるものはないの?」という声をいっぱい聞いて、
うちは最初に立ち寄る店じゃなくて、
帰る前に寄ってくれる店だということもわかりました。
「今から帰るから」という声が圧倒的に多かったんです。

なので、最後の最後に、さっぱり目の飛騨牛。飛騨を感じてもらおうと。
飛騨牛は他でも食べてるかもしれないから、
あえて軽めでさっぱりとしたバーガーをと考えました。

鈴木:新しい企画を立ち上げるとき、
やはりお客様のニーズを最優先で考えるんでしょうか。

向井:最初の頃は、お客様のニーズと自分らの考えを、
どうやったらマッチさせられるかという観点だったと思うんですけど、
そのほかに「社会のニーズ」っていうのがあるなと気がついて。
それが重要なんだなと。
自分のニーズと、現地に実際来ているお客様のニーズと、社会のニーズが
団子みたいにちゃんと串刺しになっていないと、その商品はうまくいかない。

たとえば、このフルーツも健康志向を意識してます。
飛騨牛を食べることに、ちょっと罪の意識を感じてるお客様もいるんですよ。
フルーツは、飛騨を感じてもらいつつ、箸休め的に健康志向っていう感じです。
お客様が求めているだけじゃなくて、社会のニーズもそこに組み込んでいく、
それができたら案外いけるんじゃないかなって思ってます。

鈴木:なるほど。いつ、そこに気が付かれたんですか?

向井:もともとは、どうやって事業を維持するかを必死に考えて、
お客様といろいろ話をして、なるだけ自分が無になって、
声を聞いて……というのがきっかけです。
いろんな意見が当然いっぱいあるじゃないですか。
それを全部叶えるのは無理ですよね。
どれを取捨選択したらいいかも判断がつかないっていう時、
社会のニーズとお客様のニーズが合致しているものに
トライしてみたいと感じたんです。

鈴木:社会の流れを読むということ。

向井:はい。
たとえば、いま北朝鮮問題で高山自体のインバウンドは減ってるんです。
そういうことには敏感にならざるを得ないですよね。
いつも常に意識はしています。


食べ歩きできるグルメでヒット商品を生み出した
向井公規社長は、
なんと、まったく異業種といえる美術館経営でも
赤字脱出、黒字転換に成功されています。

向井さんが経営される「飛騨高山美術館」は、
ミシュラン三つ星を5回連続で獲得している、
世界有数の装飾美術館。

しかし、高い評価とは裏腹に、
その運営はかなり厳しいものだったそうです。
レストラン経営とは異なる視点で、
「地元に愛される場」としての美術館を目指し、
見事黒字へと導いた向井さんの手腕とはーー?

一般には敷居の高い場所に人を呼ぶ。
当たる企画につながった思いとは?

鈴木:「飛騨高山美術館」は、どんな経緯で建てられたのでしょうか。

向井:これは父の趣味が高じてできたものです。
自分がちょうどハワイにいる時、1997年に開館したんですが、
これを建ててから、実は会社の経営がだんだん大変になってきて(苦笑)。
それで、戻ってきてくれと言われたんですけどね。

鈴木:向井さんが美術館経営に携わるようになったのは、いつ頃からになりますか?

向井:8年ほど前から美術館の経営に本格的に取り組み始めました。
でも、なかなか利益を出すのは大変でした。
美術館が建ったのが21年前で、
自分が入ってからも最初の3年くらいは赤字でした。
もちろんそれ以前も、もれなく赤字。
やっと決算書上で黒字になったのは去年のことです。
とにかく黒字にしていこうということで、現在も必死に頑張ってます。

私が関わってからは、まず、ブライダルのプランを企画したり、
夏は天然芝の庭が広がっているので、
それを利用してビヤガーデンを開いたりというところから始めました。

正直、入館料を払って来てくれる地元のお客様はほとんどいないんです。
観光客はいらしてくれるんですけどね。
飛騨は交通網があまり充実してないので、
たとえば震災などで土砂崩れがあったら、
すぐに周辺の都市と分断されてしまうような立地です。
それを感じた時、あらためて地元の人たちに向けて、
この場所を運営していきたいと意識するようになりました。
ブライダルは、最初の頃は申し出があったらやろうというスタンスでしたが、
近年はちゃんとした事業としてやっています。

鈴木:豊かな自然の中に建つ、とても美しい美術館ですよね。
ここで結婚式を挙げるというのは、すごく素敵だし、
参列した方にとっても、良い思い出になるでしょうね!
この美術館に展示されているのは、装飾美術ということですが、
具体的にどういったものが収められているのでしょうか?

向井:アール・ヌーヴォーやアール・デコの工芸品、家具、装飾品がメインです。

鈴木:それはお父様が趣味で集められた?

向井:それも一部ありますが、好きなものっていうよりも、
歴史的に重要なものをという観点で集めてあります。
時代の系譜がしっかりわかるようなラインナップで揃えています。

鈴木:美術館という目的が、はっきりおありだったんですね。

向井:まあ、相当パワーがある人で。あと、父は「箱」を作るのがすごく好きなので、
そこにはえらいお金をかけちゃったりするんですよ(笑)。
この美術館も、イギリスのビクトリア&アルバートミュージアムを意識して
作ったらしいです。

鈴木:確かに、外観は近代的でシャープな印象ですが、
内観、特に19世紀末インテリア館などは、
とても凝った展示の仕方をされていますね。

世の中の動向を見逃さない。
迅速に他店との差をつけるワザ。

鈴木:この「美術館」という非日常の場所を使って、向井さんはブライダル、
ビアガーデンのほかにも、さまざまな企画をされているそうですが。

向井:地元の人に集まってもらえるイベントを、いろいろ実践しています。
芸術を楽しみながらのワイン会、音と芸術と食事を組み合わせた企画とか。
池があるので、光と音と踊りとのイベントなど、
ランドスケープとして利用したり……。
富山の「越中八尾おわら風の盆」の方々に来ていただいたりもしました。
いま考えているのは、芸術年表と料理年表を重ねた催しです。

鈴木:料理年表……?

向井:芸術にはその系譜を表す年表がもちろんありますが、
料理にも同じような年表があるんです。
料理年表と芸術年表を重ねると、
たとえば「エミール・ガレが何を食べていたのだろうか」
ということが、文献をたどってわかるわけです。

いま、もう取り掛かっていて、年内にはそれを形にしたいと思っています。
イタリアンの奥田政行シェフと懇意にさせてもらっているので、
一緒に「あの芸術家が食べていたものを再現しようか!」とか、
何かそういう、コンセプトのあることを、
「美術館のレストラン」という特別な場所で実現したい。
あと、料理人の聖地にしたい、という目標もあります。
芸術愛好家だけではなくて。

鈴木:さまざまなアイデアをお持ちですね。
その企画、私もぜひ体験、というか、味わってみたいです。

向井:一方で、地道な努力も常にしています。
たとえば、今年の夏、
ビアガーデンを始める前にアルコール類の値上げがあったんです。
その発表があったと同時に、
仕入れ先に「ビアガーデン分は元の価格で卸して欲しい」とお願いして、
2ヶ月分の樽を全部押さえ、うちは従来通りの値段で出すようにしたんです。
おかげさまで、ビアガーデンはすごく賑わって、
お客様にも喜んでいただけました。

情報が入ったら、すぐにうちは何ができるか、
お客様にどう対応できるかを考えます。

自分らは株式会社の運営なので、補助金も助成金ももらえないですよね。
だから、利益を上げていかなければいけない。
黒字にできる運営を、しっかりと証明できるようにしたいです。
「美術館・博物館黒字化計画」を立案して、その情報を伝えることができれば、
日本中の美術館のお役にも立てると思ってます。

目標は、「200年続く美術館」です。
私の父親が、「この建物は外壁に大理石とガラスを使っているし、
構造自体、200年持つようにできている」と言っていたんですね。
それを、私は勝手に「200年続けろ」ってことだと解釈して。
でも、お金と人が続かないと、それは叶わない。

まずは、美術館の経営で、キャッシュを確実に生めるようにする。
そして、一つでも多くの美術館・博物館がイキイキできるような
仕組みを作れたらいいなと思いますね。

鈴木:黒字という目の前の目標の先に、大きなビジョンがおありなんですね。

ビジネスで使えるアイデアを手に入れる
簡単かつ確実な方法。

鈴木:向井さんは、アルマクリエイションズの「完全攻略塾」を受講されましたが、
学ばれたことは、どんな風に事業に役立ちましたか?

向井:私は、もともと神田先生の書籍を全部読んでまして……。
本は結構読むほうですが、神田先生の本は、
どれも流し読みではなく、じっくり熟読させてもらってます。
受講のきっかけは、たまたまネットで見つけて、
「本だけじゃなくて直接声を聞いて体系的に学べたら幸せだな」
と思って申し込みました。

完全攻略塾を実際受けたら、これまで「知ってるつもり」だったことが
多かったってことに気づけましたし、
神田先生の20年くらいの体験や実践が凝縮されているので、
とてもわかりやすかった。

それを従業員にも共有してもらおうと、
『稼ぐ言葉の法則』を配って、いま社内で教科書にしてます。
この本の「売れる公式」1〜41を読んだ上でアイデアを出してもらい、
活用しています。
読み込んでる子は、結構深く読み込んでますね。

鈴木:教科書に! それを始められて、変化は起こりましたか?

向井:いままで、発想のベースになるようなものがなかったので、
従業員はそれぞれが思いついた、それぞれのアイデアを出していました。
そうすると、結果として足して2で割った意見になっちゃう。
「せっかく言ってくれたから」というような気遣いが双方で起こって、
アイデアを融合させちゃうことが多かったんです。
まとめ方としてはきれいかもしれないけど、実際形にすると、
ビジネスとしては説得力がないものになってしまう。

しかし、この本をベースにしたら、
「ここに書かれているこれで、こう思った」
という発想の確かな足がかりになる。
ちゃんとビジネスとして使える意見になってるし、
譲り合ったり気遣ったりみたいな、変なまとめ方もなくなりました。
始めて1ヶ月弱なので、まだまだこれからもっと変わるんじゃないかと思ってます。

(おわり)
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<向井公規さんプロフィール>
むかい きみのり 株式会社紀文 代表取締役社長
ハワイの大学とビジネスカレッジで観光学、コンピューターサイエンスを修め、ホテルや旅行会社で実践を学びながら、インターネットでハワイのグッズやブランドを販売する会社を立ち上げる。事業は順風満帆ながら、ビザが切れたことを機に26歳で帰国し、東京のIT企業でプログラマー、システムエンジニアとして活躍。その後、30歳で故郷の飛騨高山に戻り、父の事業に参加。8年前から美術館経営、飲食事業の経営に携わる。

レストラン花水木
飛騨高山美術館

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