CUSTOMER SUCCESS REPORT

日本酒業界の雄・一ノ蔵は、なぜ伝統を守りながらも、新しい挑戦を続けられるのか?

投稿日:8月 25, 2020 更新日:

海外のお酒好きを中心に、グローバル市場にも受け入れられつつある「日本酒」。
しかし、国内に目を向けると、出荷量は約20年の間に半減以上となっているというデータも......

まさにそうした市場で50年近く、試行錯誤を繰り返し、日本酒復権、新しい酒文化にチャレンジし続けている酒造メーカーがあります。

宮城県大崎市に拠点を構える清酒製造業、株式会社一ノ蔵。

 

 

宮城県内の4つの蔵元が企業合同することで第一次オイルショックのあった1973年に創業。
以来、伝統的な製法を守りながら、元々の蔵元4家が交代で社長を務めていくというユニークな経営は、割と知られていないことでしょう。

日本に1600社ほどある清酒製造業の中では20番手の宮城県を代表する酒蔵、
株式会社一ノ蔵の代表取締役専務は、浅見周平さん。

酒蔵メーカーとしては、まだまだ新しい企業ではありますが、業界全体としては成熟した業界であり、変わらないこと・伝統が重んじることを良しとする世界の中で、浅見さんは常に新しい挑戦を続けていらっしゃいます。

経営理念の「明るく、個性的で使命感と躍動感のある人と企業でありたい」という言葉を体現した浅見さんの挑戦の軌跡を紐解いていきたいと思います。

 

 

共有の危機に立ち向かうため仲間が集った

今でこそ、海外への輸出も盛んに行なわれている日本酒(清酒)ですが、創業当時は非常に厳しい状況にありました。

1970年代、ビールが毎年のように市場を伸ばす一方、清酒の出荷数量は減少傾向に転じます。

 

そんな中、共通の危機感を抱いていた4つの蔵が各々の蔵を閉じ、不退転の覚悟で新たな地に一ノ蔵を創業します。
初代社長の松本善作氏は
「家族ぐるみでつき合い、喜びも悲しみも分かち合おう。力を合わせて新しい蔵を作り、できるだけ手づくりの仕込みを残した高品質の酒を」
という信念を持ち、新会社の仲間とともに、自分たちの目指す酒づくりに試行錯誤しながら没頭します。

 

一ノ蔵の経営を救ったのは、1977年製造販売された『一ノ蔵無鑑査本醸造辛口』

一ノ蔵無鑑査本醸造は、酒類の級別制度を廃止させる原因になった画期的な日本酒で、今でも一ノ蔵の売上の40%を占める銘酒です。

 

当時、日本酒は特級・一級・二級と等級分けがされていました。
しかし、この級別制度は矛盾を抱えていました。
人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する官能審査で特級と一級は審査するが、審査を受けなければ全て二級。

 

官能によるため曖昧な判断もあり、また、大吟醸などの高品質なお酒は地方の蔵元では定期的に審査を受けるほどの数量がないことから2級酒として売られていました。
級別は必ずしも品質を反映したものではなかったのです。
さらに酒税が一升瓶で一級酒と二級酒では300円以上も違っていたと言います。

 

そこで、一ノ蔵は「一級酒の品質のものをあえて二級酒とし、節税酒として販売する」ことで級別制度を逆手に!
商品名に無鑑査とうたい、ラベルには

「一ノ蔵無鑑査は弊社の良心により厳しく鑑査されています。
しかし、本当に鑑定されるのは、お召し上がりになるあなたご自身です。」

と訴えかけたのだ。
やや挑発的とも言えるメッセージから、顧客は、一ノ蔵さんの覚悟を感じたことはいうまでもないでしょう。

こうして「一ノ蔵無鑑査本醸造辛口」は多くの日本酒愛好家の心を掴む代表商品に。

 

 

 

チャンスはピンチに…売り場は増えたのに、売上げが上がらない

2002年、浅見さんは一ノ蔵に入社して1年目は蔵人として酒造りの全工程を学びました。
酒造りは24時間体制で行われるので、蔵に寝泊まりすることもあり、酒づくりは体力勝負の面もあり体力的にはきつかったとのこと。

前職はシステムエンジニアだったこともあり、全く畑違いの仕事ではありましたが、微生物と対話しているような酒造りの神秘性と、その成果が日本酒としてできあがる感動など、ものづくりの充実感があったと言います。
2年目は、経理を担当。前職でのIPOに向けた資料作成の経験を活かして、業績の分析に貢献。翌年、経営者として修行を積むため中小企業大学校で、経営後継者・事業承継のノウハウを学び会社に戻った当時は、業界に大きな変化が訪れます。

 

それは酒類販売業免許の規制緩和です。
スーパーやコンビニでも酒が販売できるようになったのです。
売り場は一気に広がり、これはチャンスと酒造メーカーも沸き立ちました。

一ノ蔵でも勝負どころだと判断し、卸からの情報をもとにコンビニやスーパーでも商品を並べられるように新規開拓に力を…
しかし、蓋を開けてみると、一向に売り上げは増えなかったと言います。
逆にこれまで一ノ蔵の酒を取り扱ってくれていた、いわゆる町の酒屋は苦境に立たされ、廃業するところも少なくなかったとのこと。

 

なぜ、売り場は増えたのに、売上げが上がらないのか?
実は、町の酒屋ではたくさんある日本酒について店主がおすすめしてくれることが多かったのですが、スーパーやコンビニでは、ただ酒を置いているだけ。
これでは、消費者はどの酒を買って良いのかが分からず、聞き覚えのある銘柄を選ぶか、買うのを諦めてしまうようになりました。

 

 

ピンチがチャンスに!? 震災を乗り越えて発展する

酒類全体の消費量は横ばいでも、日本酒の売上げは下がっていきました。
チャンスと思えた規制緩和も、日本酒業界にとっては追い風とはならなかったのです。

そして、2009年リーマンショックの影響で業績が悪化。
町の酒屋はさらに姿を消し、得意先の取引量も減少するWパンチ。

さらに追い討ちをかける出来事が起きました。
それは、2011年に発生した東日本大震災。
未曾有の震災によって一升瓶換算で1万8千本以上が割れ、総額で数億円に及ぶ損失。
しかも、地震で設備が損傷したので、酒は製造できず、一ノ蔵は最大のピンチを迎えてしまいます。

 

そこで、一ノ蔵は震災後すぐに経営計画を見直しました。
浅見さん、はじめ経営幹部は、当初計画から売上を6割に下方修正し、どうやって会社を存続させるかを優先。
そんな中、東北を助けようという応援消費の風が吹きます。

日増しに全国からの注文が増え、震災以前の売上となったのです。
全国からの励ましのメッセージが社員を勇気づけ、経営危機を乗り越えることができました。
在庫が不足するなかでも、既存の取引先にはなるべく最低限の供給を維持しながらも、何とか持ち直した一ノ蔵はひとりの従業員もリストラせず、売上げも震災前年並にまで戻ったそうです。

 

さらに、一年後には、再び追い風が吹いた。
1998年に自社で開発したスパークリング日本酒『すず音』が、メディアで取り上げられ話題を呼びます。
シャンパンと同じく瓶内二次発酵により、口の中で炭酸ガスがはじける特徴から、日本酒を普段飲まない女性の顧客の心を掴みました。
製造が回復し、この『すず音』が牽引役となり、売上が大きく伸びるきっかけとなりました。

 

 

 

時代の煽りによって左右されやすい業界が見出す活路

幾多の試練を乗り越えた浅見さんは酒造業界全体に対して危機感を抱いています。
創業した1973年が日本酒業界全体の出荷量のピークで、今はその3分の1まで縮小。

 

酒類が多様化している影響もあるが、日本酒を日常的に消費する層が減っていることを指摘。
酒造業界を底上げするには、新しい日本酒の消費者層を作ることが重要だと浅見さんは語ります。

 

今後の展望として、浅見さんは純米酒のシェアを上げていくことと、海外へのセールスを強化したいと考えていらっしゃいます。
「一ノ蔵無鑑査本醸造」、「すず音」だけではなく、純米酒にフォーカス、それを生み出す一ノ蔵の酒造りを公開しながら、お客様に発信していくことを始めていらっします。

新しいものが次々と登場する時代、浅見さんはあえて定番の純米酒の再認知度を上げていく方針です。
現在の新型コロナの影響を受ける飲食業界ではありますが・・・

 

浅見さんが、所属する経営者の勉強会での、新商品の販売モデルの検討デモンストレーションから、海外も視野に入れたB2B向けビジネスへの転換のヒントも浮かび上がってきました。

これにより、繁盛会笠岡氏(以前の記事のリンク → こちらから)と飲食店オーナー向けに、コラボ企画でオンライン蔵見学&試飲会も、実施。

成熟業界が、これからの時代から選ばれるためには、積極的にデジタルを取り入れ、地域を超えた仲間とのコラボレーションが重要なポイントとなるはずです。

 

 

そして、海外輸出は1980年代から始めており、現在22ヵ国に輸出。主な取引先はアメリカ。
当時は在留邦人をターゲットにしていたが、現地の人にも商品を知ってもらうために英語が堪能な人材を派遣し、日本酒を広める活動を行っていらっしゃいます。

 

 

明るく 個性的で使命感と躍動感のある人と企業でありたい

感動の自ら湧き上がる人間集団、それを一ノ蔵と呼びたい

一ノ蔵は人と自然と伝統を大切に醸造発酵の技術を活用して安全で豊かな生活を提案することにより社員、顧客、地域社会のより高い信頼を得ることを使命とする

 

 

「今後も上記経営理念に恥じない取り組みを実施し、
若い人には日本酒に対する憧れを育みながら、
新たな日本酒の飲む手を増やしていきたいと思います。

自社を造り酒屋に限定するのではなく、
醸造発酵の企業と捉えることで、
その技術を食品など新たな分野へ
応用できる機会が広がります。

閉塞感を打破するためにも原点回帰と
発想の転換で乗り越えて行きたいと思います。」

と浅見さんは、最後に語ってくれました。

まったくの異業種から酒造メーカーで活躍する浅見さん。
伝統的な製法にこだわりながらも、日本酒らしくない日本酒を作らせたら世界一とおっしゃる自信は、これからも酒造業界に革命を与えてくれるに違いない。

 

社会課題をビジネスを通して解決する”インパクトカンパニー”が集うThe実践会

The実践会では、DX促進、中小企業のマッチング・交流から新成長事業を創り出すことを目的とした神田昌典主催の経営者の勉強会です。

価値あるつながりを作るためには自分の「強み」を活かすことが大切です。
しかし、残念ながら多くの会社はどんなに良いものを持っていたとしても十分に伝えられていません。

あなたの強みを伝わる言葉に変えメンバー同士の提携を加速させているのが、一ノ蔵 浅見さん、そして繁盛会 笠岡さんもご入会されている『Theマーケティング実践会(The実践会)』です。

中小企業の新しい「勝ちパターン」&The実践会 入会説明会

 

神田昌典によるオンライン講演会が確認いただけます。
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[email protected] 高須賀・高段

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